ご挨拶

第43回日本臓器保存生物医学会学術集会 会長
東京薬科大学 薬学部 臨床薬理学教室
教授 平野 俊彦

 本学会は、1974年に臓器移植外科医を中心として発足した「臓器保存研究会」を前身としており、主として移植医療に供する臓器の保存の向上を目指す本邦唯一の学会であります。1994年には、臓器保存研究発展のためのより広い学際の必要性が叫ばれ、多分野の研究者を取り込んだ「臓器保存生物医学会」として新生し今日に至っています。
 再生医学やiPS細胞に基づく医療用組織・臓器の創製などの領域における進歩が著しい昨今、これらの技術を用いて作成された組織が臨床の現場で用いられつつあります。しかし一方で、移植用臓器が不足している現状は十分解決されておらず、摘出された臓器をレシピエントに移植されるまで状態の良いまま保存できる技術の向上が、常に必要とされて参りました。この様な要求に応えるべく、現在の本学会の研究領域は、移植外科はもとより、基礎医学、薬学、農学、工学、獣医学など幅広い分野に及び、会員も医師、薬剤師、獣医師、看護師、移植コーディネーター等の専門職を有する研究者や実務者を擁した、特色ある学会として機能しております。学会が発行している季刊誌は、臓器保存や再生医学をはじめ、薬物療法、人工臓器、医工学、農獣医学等、移植医療の向上に係る様々な研究領域の最新の研究成果を紹介した原著論文、総説、連載記事、トピックスを掲載し、学術的価値も高いとの評価を受けております。
 第43回日本臓器保存生物医学会学術集会におきましては、各分野の研究者や医療関係者など約150名の参加者が見込まれます。本集会では、上述した本学会の基盤と特色を生かした5つのシンポジウム、2つの教育講演、会長による特別講演、2つのランチョンセミナーおよび口頭発表による一般演題を設け、また優秀演題や講演に対しては、1名の学会賞および2名の会長賞を授ける予定です。 このような本学術集会を通じ、広い学際の研究者が臓器保存技術と移植医療の向上という一つの目標に向かって一致協力できる、有意義な学術交流の機会をご提供したいと願っております。紅葉かなでる本学キャンパスにて、たくさんの方々のご参加をお待ちいたしております。