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"生老病死"に関する倫理問題を薬学的観点から捉える

研究室のねらい

生命・医療倫理学研究室では、医学領域における「薬の倫理」「薬剤師としての倫理」を中心に、臨床あるいは研究の現場に生じている問題について調査研究を行うことを目的とします。

具体的には、現在の医療領域に横たわる倫理的問題(たとえば、患者の権利、妊娠・出産、看取り、医療技術の進歩、薬害、動物のいのちなど)を洗い出し、医療人として、あるいは薬剤師としてどう向き合うべきなのかについて、論文の精読や患者、患者家族、医療者へのヒアリングなどをとおして研究を進めていきます。

研究テーマと概要

在宅医療における倫理的問題について考える

「在宅医療」というキーワードを一つ取ってみても多様な問題があります。こうした問題に対し、「薬」「薬剤師」の観点から研究します。

<終末期>近年、人生最期の時間をご家族とともに在宅で過ごしたいという末期のガン患者さんが増えてきました。末期の状態では、穏やかな日々ばかりではなく、時として耐え難い苦痛に襲われることがあります。このような場合、患者さんの希望に基づき、苦痛を取り除くため鎮静剤を投与し、眠ったまま最期を迎える終末期鎮静が実施されることがあります。処方された薬が患者の生死に直結するとき、薬剤師の立場から考えるべき倫理観について考えます。

<高齢者・認知症>他方、介護施設に入居している高齢者の多くが認知症を抱えており、意思決定が難しい患者に対し高血圧症などの服薬を行う機会が増えてきました。また、若年性認知症の患者もいますが、仕事との両立や医療費補助などの社会的支援が届いていないと聞きます。現在、国が取り組んでいる認知症支援を検証し、制度の見直しを行います。

<小児医療>新生児医療の進歩により、これまで生まれてまもなく亡くなっていた子どもたちが在宅で暮らすようになりました。しかし、訪問医療・看護の利用は少なく、主に母親が子どもの介護を一人で担っています。子どもへの服薬の工夫や母親の相談にのることなど、実は薬剤師がかかわれることはたくさんあります。


患者の治療方針について考える

医薬の進歩に伴い、患者さんの治療方針について幾つかの選択肢が与えられるようになりました。他方で、どこまで治療をするのか/いつまで治療を続けるのかといった倫理的問題もあり、医療者はジレンマを抱えています。

また近年では、医療経済の観点から重篤な疾患を持つ患者さんの治療は無駄であるという主張もあります。現在、病院では多職種の医療者がチームを組み、お互いの専門性を尊重し最大限の能力を引き出し合いながら、患者さんの治療方針を決めることが基本となっています。薬剤師も医療チームの一員として、専門性を発揮し、より適正な薬物療法を行えるよう活動をしています。しかし、臨床の現場では判断に迷うような場面にしばしば遭遇します。

こうした具体的な症例を取り上げながら、何が患者さんやご家族にとって最善なのかを考えていきます。

 

研究室メンバー

(役職:氏名 / 学位)
教授:櫻井 浩子/博士(学術)・修士(獣医学)

<2024年度>
6年生 4名
5年生 4名
4年生 4名

 

担当講義

(科目:学年【前期・後期】)

■2024年度

<薬学部>
人間と薬学Ⅰ(倫理):1年前期
医療倫理学:3年後期
医療薬物薬学科科別特論:4年前期
医療薬物薬学科科別演習:4年前期
総合演習Ⅱ(基本事項):4年後期
医療プロフェッショナリズム:5年後期
総合ゼミナール(臨床倫理):2年前期
総合ゼミナール(福祉ボランティア):2年前期
選択科目「倫理学」:1・2年前期

 

<生命科学部>
生命と倫理:4年後期