News

医療・獣医療に関する倫理問題を薬学的観点から捉える

研究室のねらい

生命・医療倫理学研究室では、医学領域における「薬の倫理」「薬剤師としての倫理」を中心に、臨床あるいは研究の現場に生じている問題について調査研究を行うことを目的とします。

具体的には、現在の医療領域に横たわる倫理的問題(たとえば、患者の権利、妊娠・出産、看取り、災害など)を洗い出し、医療人として、あるいは薬剤師としてどう向き合うべきなのかについて、論文の精読や患者、患者家族、医療者へのヒアリングなどをとおして研究を進めていきます。

また、本研究室は、全国の薬学部のなかで唯一、獣医療に関する研究に継続的に取り組んでいます。獣医師や愛玩動物看護師、そして飼い主の視点を重視しながら、動物用医薬品の適正使用、薬剤情報の提供、安全な薬物療法の在り方について多角的に研究しています。

人と動物がともに健やかに暮らす社会の実現に向けて、薬学の専門性を獣医療にどう活かせるか。その可能性を探究し、薬剤師による動物医療への貢献の場を広げることを目指しています。

研究テーマと概要

医療における倫理的問題について考える

<終末期>近年、人生最期の時間をご家族とともに在宅で過ごしたいという末期のガン患者さんが増えてきました。末期の状態では、穏やかな日々ばかりではなく、時として耐え難い苦痛に襲われることがあります。このような場合、患者さんの希望に基づき、苦痛を取り除くため鎮静剤を投与し、眠ったまま最期を迎える終末期鎮静が実施されることがあります。処方された薬が患者の生死に直結するとき、薬剤師の立場から考えるべき倫理観について考えます。

<高齢者・認知症>他方、介護施設に入居している高齢者の多くが認知症を抱えており、意思決定が難しい患者に対し高血圧症などの服薬を行う機会が増えてきました。また、若年性認知症の患者もいますが、仕事との両立や医療費補助などの社会的支援が届いていないと聞きます。現在、国が取り組んでいる認知症支援を検証し、制度の見直しを行います。

<小児医療>新生児医療の進歩により、これまで生まれてまもなく亡くなっていた子どもたちが在宅で暮らすようになりました。しかし、訪問医療・看護の利用は少なく、主に母親が子どもの介護を一人で担っています。子どもへの服薬の工夫や母親の相談にのることなど、実は薬剤師がかかわれることはたくさんあります。


公衆衛生へのアプローチ

薬剤師は、治療だけでなく広く公衆衛生にも貢献することが、薬剤師行動規範において求められています。本研究室では、その理念をふまえ、動物医療と人の暮らしの接点における多様な課題に取り組んでいます。

具体的には、災害時の避難所における人と動物の衛生管理、災害ボランティアのメンタルヘルス支援、柔軟剤などの香料製品による「香害」への対応、サプリメントやエナジードリンクの過剰摂取や依存傾向の実態、そして家庭内におけるペットの中毒事故を防ぐための飼い主の意識調査など、現代社会が抱える新たな公衆衛生課題に対して、多角的な視点から研究を行っています。


獣医療×薬学のコラボレーション

2022年に施行された「愛玩動物看護師法」により、動物病院におけるチーム医療の重要性が一層高まっています。なかでも、薬剤師の専門性は、動物用医薬品の適正使用や飼い主への服薬指導、動物の健康管理における新たな役割として、大きな期待が寄せられています。

当研究室では、獣医療に関わる薬剤師の教育支援を目的として、研修教材やeラーニングプログラムの開発に取り組んでいます。また、動物の薬物療法や薬剤管理に関する研究を通じて、薬学と獣医学をつなぐ新しい知見の創出を目指しています。

薬剤師が人と動物の双方の健康と福祉を守る「ヘルスパートナー」として活躍する未来を見据え、教育・研究を通じて社会への貢献を目指しています。

研究室メンバー

(役職:氏名 / 学位)
教授:櫻井 浩子/博士(学術)・修士(獣医学) 獣医師免許取得

<2025年度>
6年生 4名
5年生 4名
4年生 4名

客員研究員 1名

 

担当講義

(科目:学年【前期・後期】)

■2025年度

【薬学部】
人間と薬学Ⅰ(倫理):1年前期
医療倫理学:3年後期
医療薬物薬学科科別特論:4年前期
医療薬物薬学科科別演習:4年前期
総合演習Ⅱ(基本事項):4年後期
医療プロフェッショナリズム:5年後期
総合ゼミナール(臨床倫理):2年前期
選択科目「倫理学」:1・2年前期

【生命科学部】
生命と倫理:4年後期

薬剤師のための 獣医療e-ラーニング

東京薬科大学と東京海上ウェルデザイン株式会社との共同研究「獣医療における薬学研修プログラムの開発」は、以下ホームページより情報を発信しています。

薬剤師のための獣医療e-ラーニング