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研究室のねらい

私たちは生命現象を分子で理解する分子生物物理学を基盤とし、さらに創薬・診断への展開を目指したメディシナルケミストリーの両面から研究を推進しています。組み換え体による解析試料の大量調製、有機合成、ケミカルバイオロジー、また分子構造解析のための多次元NMR法やX線結晶構造解析、各種分子間相互作用解析法などを駆使して研究を推進します。分子構造に基づいた根本的な理解無くして、生き物の仕組みや、薬の働きを理解することはできません。生命現象を分子構造レベルで理解し、創薬へ展開するための営み、そこから得られる成果は、人類の最高の英知のひとつです。

研究室メンバー

(役職:氏名 / 学位)

教授: 三島正規(博士(バイオサイエンス))
准教授: 青山洋史(博士(工学))
助教: 伊集院良祐(博士(薬学))
助教: 齊藤亮平 (博士(理学))
 
大学院生(博士課程): D2 1名
6年生: 実験研究コース 4名 ; 調査研究コース 1名
5年生: 実験研究コース 2名 ; 調査研究コース 3名
(令和3年4月現在)

担当講義

(科目: 学年【前・後期】 /教員名) R3年度
物理化学I:1年後期/三島正規、青山洋史
物理化学II:2年前期/青山洋史
物理化学III:2年後期/青山洋史、伊集院良祐
物理化学・分析化学実習:2年後期/三島正規、青山洋史、伊集院良祐、齊藤亮平

人間と薬学I:1年前期/青山洋史、伊集院良祐
科別英語特論:4年前期/三島正規、青山洋史、伊集院良祐、齊藤亮平
科別特論・演習 医療衛生薬学演習I-ii:4年前期/三島正規、青山洋史、伊集院良祐、齊藤亮平
アドバンス英語:5年通年/三島正規、青山洋史、伊集院良祐、齊藤亮平
情報収集IV(調査研究コース):6年前期/青山洋史
医療衛生薬学演習II-i、II-ii:5-6年/三島正規、青山洋史、伊集院良祐、齊藤亮平
アドバンス物理演習:6年後期/青山洋史

創薬有機化学特論:大学院前期/三島正規、青山洋史、伊集院良祐
医化学特論:大学院前期/三島正規、青山洋史、伊集院良祐

最近の主な研究業績

"Spectroscopic approach for exploring structure and function of photoreceptor proteins"
Masashi Unno, Yuu Hirose, Masaki Mishima, Takashi Kikukawa, Tomotsumi Fujisawa, Tatsuya Iwata, Jun Tamogami
Biophys. Physicobiol. 2021, in press (DOI: 10.2142/biophysico.bppb-v18.014)

"Structural basis of the protochromic green/red photocycle of the chromatic acclimation sensor RcaE"
Takayuki Nagae, Masashi Unno, Taiki Koizumi, Yohei Miyanoiri, Tomotsumi Fujisawa, Kento Masui, Takanari Kamo, KeiWada, Toshihiko Eki, Yutaka Ito, Yuu Hirose, Masaki Mishima
Proc. Natl. Acad. Sci. USA 2021, in press (DOI: 10.1073/pnas.2024583118)

"Digipregnosides A-C, three novel rearranged 11,12-secopregnane glycosides, and digipregnosides D and E, 12,20-epoxypregnane glycosides from the seeds of Digitalis purpurea"
Kazuhiro Takatori, Minpei Kuroda, Masaki Mishima, Yukiko Matsuo, Yoshihiro Mimaki
Tetrahedron Lett. 2021, 70, 153020.

"Light-Assisted Catalytic Hydrogenation of Carbon Dioxide at a Low Pressure by a Dinuclear Iridium Polyhydride Complex"
Asuka Takahashi, Masaki Mishima, Kotohiro Nomura, Akiko Inagaki
Organometallics 2021, 40(2), 98-101.

"Synthesis of Polyenylpyrrole Derivatives with Selective Growth Inhibitory Activity against T-cell Acute Lymphoblastic Leukemia Cells"
Chihiro Yoshida, Tomoya Higashi, Yoshifumi Hachiro, Yuki Fujita, Takuya Yagi, Azusa Takechi, Chihiro Nakata, Kazuya Miyashita, Nobuo Kitada, Ryohei Saito, Rika Obata, Takashi Hirano, Takahiro Hara, Shojiro A. Maki
Bioorg. Med. Chem. Lett. 2021, 37, 127837.

"Mechanism of self/nonself-discrimination in Brassica self-incompatibility"
Kohji Murase, Yoshitaka Moriwaki, Tomoyuki Mori, Xiao Liu, Chiho Masaka, Yoshinobu Takada, Ryoko Maesaki, Masaki Mishima, Sota Fujii, Yoshinori Hirano, Zen Kawabe, Koji Nagata, Tohru Terada, Go Suzuki, Masao Watanabe, Kentaro Shimizu, Toshio Hakoshima, Seiji Takayama
Nat. Commun. 2020, 11(1), 4916.

"Domain selective labeling for NMR studies of multidomain proteins by domain ligation using highly active sortase A"
Takahiro Aizu, Takumi Suzuki, Akihiro Kido, Kan Nagai, Ayaho Kobayashi, Reiko Sugiura, Yutaka Ito, Masaki Mishima
Biochim. Biophys. Acta General Subjects 2020, 1864(2), 129419.

"High Sensitivity in vivo Imaging of Cancer Metastasis Using a Near-infrared Luciferin Analogue seMpai"
Jun Nakayama, Ryohei Saito, Yusuke Hayashi, Nobuo Kitada, Shota Tamaki, Yuxuan Han, Kentaro Semba, Shojiro A. Maki
Int. J. Mol. Sci. 2020, 21(21), 7896.

"Visualization of Activity-regulated BDNF Expression in the Living Mouse Brain Using Non-invasive Near-infrared Bioluminescence Imaging"
Mamoru Fukuchi, Ryohei Saito, Shojiro Maki, Nami Hagiwara, Yumena Nakajima, Satoru Mitazaki, Hironori Izumi, Hisashi Mori
Mol. Brain 2020, 13(1), 122.

"Electrochemical Synthesis of Sulfinate Esters: Nickel(II)-catalyzed Oxidative Esterification of Thiols with Alcohols in an Undivided Cell"
Babak Kaboudin, Leila Behrouzi, Foad Kazemi, Mohammad M. Najafpour, Hiroshi Aoyama
ACS Omega 2020, 5(29), 17947-17954.

"Selective Acetylcholinesterase Inhibitors Derived from Muscle Reluxant Dantrolene"
Hiroshi Aoyama, Tomohiro Doura
Bioorg. Med. Chem. Lett. 2020, 30(4), 126888.

研究テーマと概要

1) 酸化DNA損傷に関連した構造生物学

   hMTH1は酸化損傷を受けたヌクレオチドのリン酸基を加水分解し、ゲノムDNAへの取り組みを防ぐ働きをするヒトの酵素です(下図)。近年、(S)-crizotinibhMTH1に結合してその機能を阻害することで、腫瘍細胞の増殖を抑制する効果があることが示されています。創薬を目指してhMTH1の分子構造を解析と、阻害剤の開発をしています。ちなみに、(R)-crizotinibは小細胞性肺がんの分子標的薬として有名で、c-Metキナーゼ、ALKに結合することが知られています。

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2) ヒトの遺伝子量補償に関与する分子複合体の構造生物学

   ヒトの性染色体は、女性ではX染色体が2本,男性ではX染色体とY染色体が1本ずつ存在します。そのため女性の細胞ではX染色体にある遺伝子を男性の2倍持ち、それらがすべて機能してしまうと異常が生じますが、2本のX染色体のうち、1本は不活性化されています(X染色体不活性化、遺伝子量補償とよばれる)。これは非常に複雑な生体分子複合体の働きによって行われ、ノンコーディングRNAであるXistが重要な足場分子となることが知られています。私たちはXistと、Xistに結合するSHARPタンパク質の構造解析から、そのしくみの一端の解明に取り組んでいます。将来的には染色体異常の治療の手がかりが得られることを期待しています。
 

3) 細胞内シグナル伝達因子の構造生物学

   低分子量Gタンパク質には様々な種類があり、細胞内シグナル伝達を中心に、それぞれ細胞内の様々な場面で機能しています。私たちは、近年研究が進んでいるタンパク質の品質管理に関連する低分子量Gタンパク質とその分子複合体の構造解析を行っています。細胞内でのタンパク質の品質管理の異常は、疾患に関連する重要な細胞機能です。
 

4) 新規オプトジェネティクスツールの開発を志向した光センサータンパク質の構造解析

    細胞の機能や細胞内でおこるイベントを、外界から刺激によって自由にコントロールできる技術の開発は、細胞を研究するためのみならず創薬科学を推進する上で重要なツールとなります。私たちは光照射によって、細胞をコントロールする新たなツールの開発を目指し、光受容タンパク質の生物物理学的解析を推進しています(下図)。

(この研究の成果の一部は、著名な学術雑誌であるProc Natl Acad Sci U S A誌に掲載されました。また東京薬科大学からプレスリリースされ、2021年の64日の薬事日報に記事として取り上げられました)

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プレスリリース リンク先:https://www.toyaku.ac.jp/pharmacy/newstopics/2021/0511_4437.html

5) Covid-193CL-proteaseNMR解析

Covid-19タンパク質の構造解析が世界的に勢力的に行われ、阻害化合物の開発が進められています。Covid-19のタンパク質のプロセッシングにおいて中心的な役割を果たす3CL-proteaseを阻害する化合物は重要な創薬ターゲットであり、その阻害剤デザインに役立つ構造情報を得るために、NMR解析を行っています(下図)。

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