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漢方系生薬やハーブ類から、がんや生活習慣病の治療・改善薬を探索する 漢方薬の薬効の発現や副作用の発症を理化学的知見から考察する

研究室のねらい

漢方処方,漢方生薬,伝承薬,植物サプリメントの有効性の基礎的研究はまだ十分に行なわれていないため,エビデンス構築のための新しいスクリーニング系の確立,有効成分の単離,構造解析を行なっていく。

研究室メンバー

(役職:氏名 / 学位)
教授: 三巻祥浩(薬学博士)
准教授: 横須賀章人(薬学博士)
講師: 松尾侑希子(薬学博士)
助教: 井口巴樹(薬学博士)
 
博士課程:2名
6年生:14名
5年生:14名
4年生:15名
(令和5年4月現在)

担当講義

(科目: 学年【前・後期】 /教員名)
植物薬品学:2年前期/横須賀章人,松尾侑希子
漢方薬物学I:3年前期/三巻祥浩,横須賀章人,松尾侑希子
漢方薬物学II:3年後期/三巻祥浩,横須賀章人,松尾侑希子,井口巴樹
臨床漢方薬物学:4年前期/三巻祥浩,横須賀章人,松尾侑希子
 
漢方薬物学実習:2年前期/三巻祥浩,横須賀章人,松尾侑希子,井口巴樹
医療衛生薬学演習1-1 セルフメディケーション 薬剤師の関わり
(テーマ1 一般用医薬品を中心としたセルフメディケーションの提案):
 4年前期/三巻祥浩,横須賀章人,松尾侑希子,井口巴樹

研究テーマと概要

1)悪性腫瘍(がん)に有効な天然物の探索
漢方系生薬、世界の伝承薬、ハーブ、観葉植物から抽出した植物エキスの培養がん細胞(白血病、肺がん、口腔がんなど)に対する選択的細胞死誘導活性を評価します。そして有効性が認められた場合は、活性化合物の単離と構造決定を行います。さらに、活性化合物のアポトーシスやオートファジーの誘導などの作用メカニズムを検討しています。

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2)生活習慣病の改善・治療に有用な天然物の探索
漢方系生薬、世界の伝承薬、ハーブ、スパイスから抽出した植物エキスを PPAR-γリガンド活性、α-グルコシダーゼ阻害活性、キサンチンオキシダーゼ阻害活性、アルドースレダクターゼ阻害活性、活性酸素消去活性などを指標として、メタボッリクシンドロームの改善・治療に有用な天然物の探索を行っています。
 
3)化粧品素材となる天然物の探索
漢方系生薬、世界の伝承薬、ハーブ、観葉植物から抽出した植物エキスを最終糖化産物(AGEs)の生成抑制活性を指標として、皮膚の抗老化に関与する天然物の探索を行っています。また、老化・加齢に伴って皮膚のオートファジー活性が低下することに着目し、皮膚細胞に対してアンチエイジング効果を示す天然物の探索を行なっています。
 
4)漢方薬に関する研究
生薬の組合せにより各々生薬の成分の抽出量が異なってくることに着目し、漢方薬(煎じ液やエキス剤)の指標成分を定量的に分析して、漢方薬の有効性や副作用を考察しています。

主な研究業績

研究室の業績のページをご覧下さい。

トピックス

1)微小管ダイナミクスに作用する新規抗がん活性イソフラボン

Glaziovianin A は、南アメリカ原産のマメ科植物から発見したイソフラボン誘導体です。この化合物は、微小管ネットワーク構造にはほとんど影響を与えず、微小管ダイナミクスを阻害します。従来の抗がん剤は大きな微小管ネットワークの変動を引き起こして抗がん活性を示すものでしたので、この化合物は新規作用機序を有する抗がん剤の候補化合物として注目されています。

 

2)芳香精油(エッセンシャルオイル)から単離された抗がん活性物質

アロマテラピーで用いられる芳香精油(エッセンシャルオイル)サンダルウッドより、白血病細胞に対して既存の抗がん剤と同程度の効果を持つ精油成分を見つけました。精油は肺もしくは皮膚から吸収されますので、芳香療法ががん治療の一助になることを示唆した研究成果です。

 

3)リコリス(甘草)より単離された PPAR-γリガンド活性物質

リコリス(甘草)から単離されたPPAR-γ リガンド活性物質は、糖尿病モデルマウスや高脂血症モデルマウスでも有効性を示し、このエビデンスに基づきサプリメントの素材としてリコリス抽出物の販売が始まっています。