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感染症・腫瘍・免疫疾患に対する免疫調節の可能性を探る

研究室のねらい

ヒトはさまざまな生物と共生関係にある.なかでも微生物は常在菌叢として存在し,体表を覆い尽くしている.同時に,病原性微生物は体表を突破し,体内に侵入して病気を起こす.免疫学教室では,微生物菌体成分と宿主との相互作用をさまざまな角度から解析し,免疫異常が関わる,難治性疾患の診断・治療薬の創出をめざす。

研究室メンバー

(役職:氏名 / 学位)

准教授 : 安達禎之(薬学博士)
助教  : 山中大輔 博士(薬学)
嘱託助教: 菅野峻史 博士(薬学) 

研究員 : 3名
修士課程: 1名 
6年生 :18名 
5年生 :12名 
4年生 :11名

(2020年4月現在)

担当講義

(科目: 学年【前・期】 /教員名)
免疫学  :2年【後期】/安達禎之, 山中大輔
臨床免疫学:3年【前期】/安達禎之,山中大輔
細胞工学 :3年【前期】/安達禎之,山中大輔
 
薬剤師の職能と自己将来展望:4年【前期】/安達禎之
 
免疫学実習  :2年【後期】/安達禎之,山中大輔,菅野峻史
人間と薬学Ⅰ :1年【前期】/安達禎之,山中大輔
総合演習Ⅱ  :4年【後期】/安達禎之
総合薬学演習Ⅰ:6年【後期】/安達禎之
 
卒論関連科目  :科別英語特論:4年, アドバンス英語:5年
ラボラトリー演習:5,6年,
課題研究    :4 ,5,6年/安達禎之,山中大輔,菅野峻史
 
創薬生化学特論:大学院・薬科学専攻/安達禎之
 
 
(2020年度) 

研究テーマと概要

1)βグルカンの癌免疫療法への応用

癌免疫療法は代替医療の側面,ならびに細胞療法・遺伝子療法の側面の両面から臨床的可能性が探られている.我々はさまざまなβグルカンを現有しているので,それらを駆使して,両面への応用を展開している。

2)深在性真菌症の早期治療法の開発

細胞壁βグルカンを可溶化する方法を開発したので,可溶性βグルカンとカブトガニの体液凝固因子を用いて,早期診断の確立をめざしている。

3)血管炎症候群の解析

抗好中球自己抗体産生が関わる自己免疫疾患について,基礎動物モデルならびに臨床の両面から解析している。

4)内毒素性ショックの解析

細菌内毒素受容体CD14に対する単クローン抗体を樹立したので,これを用いて,ショックを分子レベルから解析している。

主な研究業績2020年度

「2020年度」研究室の業績をご参照ください。

「2019年度」以前の研究室の実績はこちらをご参照ください。

 

最近のトピックス

1)真菌細胞壁βグルカンの可溶化方法を開発した.真菌症の早期診断に役立てるほか,疾患の原因究明へのツールにもなりそうである。

2)マウスCD14の単クローン抗体を樹立した.これは細菌内毒素の結合部位に対するクローンであり,内毒素性ショックの機構解明に役立ちそうである。

3)薬用茸から,新規βグルカンを開発した.これらを用いて,経口免疫機構を解析することは予防医学の確立に役立ちそうである。

4)カンジダ由来の細胞壁多糖CAWSによって,マウスに川崎病類似の血管炎を誘発できることがわかった。

大野教授 最終講義資料

3/7に行われる予定だった、大野尚仁教授の最終講義は、
新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、延期となりました。
最終講義の資料を掲載します。

大野教授の略歴と研究業績

大野教授 最終講義スライド

 

免疫学教室の研究紹介

免疫学教室は、真菌感染症の早期診断と治療やアレルギーの根治治療への貢献を目指して、自然免疫の反応機構を分子レベルで解析する研究を行っています。

1) 真菌症の早期診断を目指した新たな診断薬の開発
深在性真菌症は、臓器移植、がんの薬物治療、生活習慣病、高齢化など日本の医療が抱えている問題に密接に関わる感染症で、今後、益々増加すると予測されています。深在性真菌症の治療には抗真菌剤を用います。しかし、原因となる病原体の特定が難しいだけでなく、早期に治療を行わなければ重症化しやすく、致死率が高い感染症です。真菌症治療で重要なことは、いかに早く正確に診断できるかです。
免疫学教室は真菌の細胞壁多糖β-グルカン(BG)に着目し、その化学構造の分析、BGやAGに対する免疫反応を解析し、β-グルカン抗体、グルカンに対する免疫細胞の受容体解析を進めてきました。ヒトの血液には本来、BGに反応性の抗体があり、真菌感染に伴いそのβ-グルカン抗体価が変動することを見出しています。さらに、深在性真菌症の患者血中にはBGが検出されます。しかし、その量は数十 pg/mLと微量です。この微量なBGを検出するための分子プローブを我々は研究しています。現在、無脊椎動物のβ-グルカン受容体タンパク質やβ-グルカン分解酵素の遺伝子改変によって得られた分子プローブを開発し、現行の診断薬の問題点である非特異的な検出を低下させることができるか、深在性真菌症をより正確に高感度で診断する新たな診断薬の開発に挑戦しています。

新しい深在性真菌症診断薬の測定原理の一例
真菌から放出されるβ-グルカンを捕らえて、検出する仕組みを開発しています。

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2)アレルギー疾患(花粉症)の発症機構の解析
アレルギー増悪反応の機序はまだまだ分からないことが多いのです。アレルゲン(抗原)に対するIgE抗体が産生されることはよく知られていますが,自然免疫の活性化が発症の鍵を握っている可能性があります。我々は、花粉症などのアレルギーの発症に自然免疫系受容体が関与するかどうかデクチン-1ノックアウトマウスを使った動物モデルで研究しています。これまで、このノックアウトマウスの樹状細胞は花粉粒子に対する反応性が著しく低下していること、花粉感作で誘導される花粉アレルゲン特異的なTh2サイトカインやIgE産生がこのノックアウトマウスではほとんど誘導されないことを見出しました。このマウスで欠損している自然免疫系受容体が花粉症発症において重要な鍵を握っているのではないかと推察し、研究を進めています。将来的には、この受容体の働きを詳細に解析し、上手に受容体の機能をコントロールすることで、Th2細胞などが関わるタイプ2免疫反応を制御して、根本的な花粉症治療法を開発したいと研究しています。

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3)機能性食品による免疫調節作用の解析とその応用研究
近年、機能性食品による免疫調整機構が次々と明らかになっています。私たちは特に食用真菌(キノコや酵母)や藻類(ユーグレナ)による免疫調整作用に高い関心を持っています。これまでに、遺伝子工学技術を応用して食品に含まれるBGやポリフェノールの免疫調節メカニズムを分子レベルで解析してきました。現在は、これらの分子を用いて感染症予防のための新規ワクチンアジュバントの開発や、アレルギー治療のための新規キャリアの開発を目指しています。

4) 臨床現場(薬局)との連携による調査研究
 6年制薬学教育では、大学と臨床現場の連携強化を重視しています。薬局現場での薬剤師業務における課題を解析し、その改善策を立て、患者様の健康をいかに効果的にサポートできるのか。日々対策を考え、改善を継続することが重要と考えられます。免疫学教室は薬局との共同研究で、来局患者様等を対象に真菌症や免疫疾患に関するアンケート調査を行い、患者様が抱えている問題点などを分析し、薬剤師の視点でそれをどう解決できるのかを提案し,薬剤師の職能を高めるための研究を行っています。
具体的には、提携する保険薬局店舗での患者アンケート調査等を行います。課題立案とその対策について現場薬剤師の協力のもと調査・検討し、薬剤師の職能向上への貢献を目指しています。これまで調査研究コースの卒論生は提携薬局の現場で行ったアンケート調査結果をまとめ、研究会や薬局学会等で発表しています。文献調査だけでなく、自ら得た臨床データで課題研究論文を作製することは貴重な経験になると思っています。将来、薬局薬剤師として活躍したい卒論生にお奨めしたい研究活動です。