卒業論文関連

卒業論文研究の概要

研究の方針 image pic

研究自体の楽しさを知り、未知への挑戦へのやりがいを感じ、課題解決のための思考力を身に着ける、といった研究活動を通じ、一人ひとりの個性に応じた能力をしっかりと伸ばします。また、学内外の仲間と共に研究を進めていく楽しさを味わうとともに、ビジネスマナーも身に着けることで、協調性を養います。これらの取り組みにより、将来社会から高い信頼と評価を得て自分の夢・希望を実現出来るよう、みなさんの成長を精一杯応援します。

右のイラストには、進路のイメージを示しました。薬学部卒業後には様々な進路があります。夢膨らませ、大きく育っていく姿を楽しみにしています!

特に力を入れて育成したいこと:

・将来に向けた意欲
・論理的な思考力
・魅力的なプレゼンテーション能力
・科学的なものの見方

 

実験研究コース:

ヒト脳モデルを用いた薬物治療・創薬に関する研究(降幡)

死なない細胞でヒト脳を創り、創薬と治療に応用するプロジェクトです。実験研究は、創薬を志向した研究が主体です。一部は、病態や治療に関わる研究内容もあります。ヒト脳を実験室で再現し、脳へ薬がどう届くか、どう届けるか、脳疾患がどのように起こりどのように治療するか、創薬から臨床に応用するまでを見据えて、を研究します。また、血液脳関門やヒト脳が、どのような仕組みで出来上がってくるか、にも興味を持っています。製薬企業やバイオ企業との共同研究もたくさん走っています。

テーラーメイド薬物治療に関する研究(柴崎・横川)

柴崎担当

(1) 6β-ヒドロキシコルチゾールとコルチゾールの血中濃度比 (CYP3A活性評価の指標) の集積:CYP3A活性の層別化(年齢や基礎疾患などのグループごとの活性を知る)を目指し、様々な被験者を対象にデータの集積を行います。

(2) 非侵襲的試料 (爪,唾液) を用いた生体成分の分析法の開発:非侵襲的に得られる爪を用いたCYP3A活性評価法の確立を目指しています。1点の採血や指先から取る乾燥ろ紙血を用いた低侵襲性のCYP3A評価。唾液中濃度の測定法の開発も行います。

横川担当

(1) 薬物代謝酵素活性の評価:薬物を代謝する酵素には個人差が存在します。この個人差が原因で同じ薬物量を投与した場合でも副作用が発現する人としない人にわかれます。この酵素活性を正しく評価することで個別化薬物治療が可能となると考えられます。特にシトクロムP450 (CYP) は酵素活性に個人差が大きい代謝酵素です。その分子種の一つであるCYP1A2活性を評価する方法を検討しています。

(2) 高分子化合物の血中濃度の定量:近年開発される医薬品では、タンパク質やペプチドなどの高分子化合物の薬物が増えてきました。また、内因性の高分子化合物が様々なバイオマーカーに使用されています。一方で、これまで高分子医薬品を正確に定量することは難しいとされていました。そこで、LC-MSを用いた新しい高分子化合物の定量法を研究し疾患診断や血中濃度評価への応用を目指します。現在は腎機能評価に用いられるシスタチンCの定量法の確立を目指しています。

グリオーマ治療開発に向けたモデル構築及び分子標的探索(森尾)

難治性脳腫瘍であるグリオーマの治療における課題解決に向け、以下のようなテーマを設定して研究を行っていきます。

(1) 新規生体模倣性in vitroヒト脳腫瘍血管バリアモデルの構築(メイン): グリオーマの治療抵抗性の主な要因として、手術による摘出が困難な浸潤性の高い腫瘍部位の残存があります。これに対し、浸潤性の腫瘍部位までアプローチできる新たな治療戦略として脳腫瘍血管バリアを標的とした治療アプローチが注目を浴びており、このバリアの標的創薬に有用なモデルへの期待が高まっています。これに対し、当研究室が有する独自の細胞モデルを用いてin vitroヒト脳腫瘍血管バリアモデルを樹立し、ここから独自の抗脳腫瘍薬の創出を目指します。

(2) グリオーマ治療における新規分子標的の探索

(3) ペリサイトを用いた細胞医薬開発

調査研究コース:

脳疾患および治療薬の開発、または血液脳関門モデルに関する調査研究(降幡)

希望によりこれ以外の内容も検討します。いずれにしても、調査研究の学生さんには、講義がない時に月に数報の英語原著論文を読んで勉強会資料としてプレゼンテーション資料としてまとめ、講師として実験グループの学生の前で発表していただく予定です。私達に最新の情報を提供してください。また、関連学会に参加して可能な限りの情報収集をし、その情報を不参加者に対してプレゼンテーション形式で説明していただくことも考えます。また、調査研究に少し実験を組み込んだテーマとする可能性もあります(ただし、実験コースほどの実験はしません)。

薬剤師の専門性に関する調査研究(柴崎・横川)

柴崎担当

(1) 杏林大学 救急診療科での研修に基づく調査研究

(2) 内因性物質の定量や薬物代謝酵素活性に基づく個別化薬物治療に関する調査研究

横川担当

(1) 母集団薬物動態解析に関する調査研究:病院などの臨床現場では、ベイジアン法で血中濃度データの解析が行われます。この際に必要となる情報に母集団薬物動態パラメーターというものがあります。この母集団薬物動態パラメーターは対象となる患者で違ってきます。それぞれどのような違いがあるかを調査し、予測精度に及ぼす影響を考察したいと思います。

(2) 新しい治療薬・治療方針に関する調査研究:皆さんはこれから病院や薬局に長期実習に行きます。その際に様々な薬物や治療方法を勉強すると思います。それらの中でさらに興味を持ったことを対象に、文献調査による発展学習を行い、卒論にまとめます。

グリオーマの新規治療・診断法の開発につながる調査研究、データ解析(森尾)

がんに関する多様なデータベースを用いたデータ解析を行うことで、グリオーマの新規治療・診断法の開発につながる調査研究に取り組んでもらいたいと思っています。本テーマについては特にこれから学ぶべきことが多く(むしろ学生から教員に教えて欲しいくらい)、起ち上げに数年要することも予想されることから、根気が必要な作業になると考えておいて下さい。

実験研究・調査研究コース共通:

英語論文セミナーを行います。
卒業論文の作成とプレゼンテーションの指導等を行います。
学会にも参加します。
上記以外の課題案もありますので、相談しながら課題を決めましょう。

降幡テーマ分補足

 

schedule

 

2020年度 卒業論文

【実験研究コース】

LC-MS/MSを用いたフルチカゾン、コルチゾール、コルチゾンの同時定量法の開発(柴崎)
HPLC-UVによる血中非結合型ドセタキセル濃度定量法の開発(柴崎)
非侵襲的 CYP3A 活性評価を目的とした爪中 6β-hydroxycortisol 及び cortisol 定量法の開発(柴崎)
HPLC-UV 法とLC-MS/MS 法による尿試料定量時の最適な前処理法の確立(柴崎)
LC-MS/MS による血清シスタチンC定量法における測定条件の検討(横川)
薬物代謝酵素CYP1A2活性評価のための血中melatoninとその代謝物のLC-MS/MS定量法の検討(横川)

【調査研究コース】

がんゲノム医療における遺伝子パネルの有用性と課題に関する調査研究(降幡)
グリオーマに対する新たな分子標的薬である変異型IDH1阻害薬に関する調査研究(降幡)
NYーESOー1を標的としたがんワクチン療法の現状と課題に関する調査研究(降幡)
膵神経内分泌癌に対する二次治療薬に関する調査研究(柴崎)
神経障害性疼痛治療薬ミロガバリンの有効性と安全性に関する調査研究(横川)

( )内は指導担当教員.  実験コースの降幡担当卒論は来年度からです

2019年度 卒業論文

卒業論文研究テーマ

高分子化合物シスタチンCのLC-MS/MSによる血中濃度定量法の開発
がん患者におけるレゴラフェニブ 及びその代謝物の体内動態と副作用の関連性の解明
LC-MS/MSによるヒト血漿中フルチカゾンプロピオン酸エステルとコルチゾール及びコルチゾンの同時定量法の検討
非侵襲的CYP3Aジェノタイピングの検討とジェノタイプからフェノタイプの予測に関する研究
11β-HSD2活性を考慮した血中非結合型コルチゾール濃度の唾液中濃度からの予測に関する検討
6β-ヒドロキシコルチゾールの腎クリアランスの個人間変動に関する研究
新規抗てんかん薬ラコサミドの有効性・安全性に関する調査研究
再発・難治性急性リンパ性白血病の新規治療薬チサゲンレクロイセルにおける小児への投与に関する調査研究
アトピー性皮膚炎における新規治療薬デュピルマブの有効性と安全性に関する調査研究
PDE4阻害作用を有する化合物FCPR16のパーキンソン病治療における有用性の調査研究
新規腎性貧血治療薬HIF-PH阻害剤ロキサデュスタットに関する調査研究

2011-2018年の卒業論文題目はこちら