News

薬物の生体内代謝と安全性に関する研究

研究室のねらい

本研究室では「薬物の生体内代謝と安全性に関する研究」をテーマに、薬を始めとする様々な化学物質が人体内で代謝される際に生成する有害代謝物の正体やその生成、そしてその解毒のメカニズムを分子レベルで明らかにする研究をしています。

研究室メンバー

CellsPhoto.jpg(役職:氏名 / 学位)
教授:平塚 明(薬学博士)
准教授:小倉健一郎(薬学博士)
講師: 西山貴仁(薬学博士)
助教: 大沼友和(薬学博士)

6年生:13名
5年生:13名
4年生:13名
(平成26年5月現在)

担当講義

(科目: 学年【前・後期】 /教員名)
3年【前期】健康・環境系ゼミナール/平塚 明、小倉健一郎、西山貴仁、大沼友和
3年【後期】化学物質と生体影響/平塚 明、小倉健一郎、西山貴仁
3年【後期】病態生理学・薬物安全性学実習/平塚 明、小倉健一郎、西山貴仁、大沼友和
4年【前期】健康と環境II/平塚 明、小倉健一郎、西山貴仁
その他 4P80、PBLT、総合演習講義、アドバンス演習講義

研究テーマと概要

1)抗がん剤が効かなくなるがん細胞の耐性機構の解明

 現在がんの化学療法は,術前・術後の補助療法および進行・再発の治療法として重要な役割を担っています。しかしながら、抗がん剤はがん細胞のみを標的として作用する選択性は低く、同時に正常細胞も損傷するために毒性が現れることは避けられません。そのため、治療のための有効治療域は非常に狭いものとなり、個体差も現れやすく、副作用発現には十分な注意が必要です。そのようながんの化学療法における大きな問題の一つとなるのが、薬剤に対する耐性化です。すなわち、化学療法開始当初は有効であった抗がん剤が、連用していると次第に効果が失われ、がん細胞の増殖を抑制できなくなってしまいます。このようながん細胞の耐性化機構を明らかにし、抗がん剤の有効利用や耐性化を防ぐ方法を開発する研究を行っています。

2) 薬物代謝第II相酵素の機能解明とその役割

薬物代謝酵素には第I相反応を触媒する酵素群と第II相反応を触媒する酵素群が存在します。主に化学物質の抱合反応を触媒する第II相酵素群として、硫酸転移酵素(SULT)、UDP-グルクロン酸転移酵素(UGT)、グルタチオン S-転移酵素(GST)、アセチル基転移酵素(NAT)などが知られておりますが、その機能についての研究はシトクロム P-450 (CYP)などの第I相酵素に比べて著しく遅れていました。本研究室では、これらの第II相酵素群のタンパク質発現系を構築し、それらの酵素機能を分子レベルで明らかにしてきました。現在では主にUGTの機能解析や生体内での役割を明らかにする研究を行っています。

3) 和漢薬や植物成分による生体防御とがん抑制

有毒化合物からの生体防御機構として、2)で挙げたような活性代謝物や活性酸素を解毒する薬物代謝酵素が存在していますが、これらの酵素を増加させることによって解毒代謝機能を増強することが可能になります。現在ARE/Nrf2/Keap1経路と呼ばれる細胞内シグナル伝達経路によって、種々の解毒代謝酵素が誘導されることが明らかにされています。有名な例としては、ブロッコリーなどに含まれるスルホラファンがこの経路を活性化し、生体防御に働くとされています。本研究室では、和漢薬や植物成分によってこのシグナル伝達経路が活性化または阻害されるか否かを明らかにし、和漢薬による生体防御や抗がん剤の作用増強に伴うがん抑制を可能にする研究を行っています。既に漢方生薬に使用される羌活や桂皮から、Nrf2の活性化および阻害成分を発見しました。

主な研究業績(過去3年間)

Tissue distributions of 4-(hydroxymethylnitrosamino)-1-(3-pyridyl)-1-butanone glucuronide, a stable form of reactive intermediate produced from 4-(methylnitrosamino)-1-(3-pyridyl)-1-butanone, in the rat., Nishiyama T, Ogura K, Ohnuma T, Hiratsuka A., J Toxicol Sci. 2014;39(2):263-7.

Enhanced sensitivity of A549 cells to the cytotoxic action of anticancer drugs via suppression of Nrf2 by procyanidins from Cinnamomi Cortex extract. Ohnuma T, Matsumoto T, Itoi A, Kawana A, Nishiyama T, Ogura K, Hiratsuka A., Biochem Biophys Res Commun. 2011 Oct 7;413(4):623-9.

Dietary diacetylene falcarindiol induces phase 2 drug-metabolizing enzymes and blocks carbon tetrachloride-induced hepatotoxicity in mice through suppression of lipid peroxidation., Ohnuma T, Anan E, Hoashi R, Takeda Y, Nishiyama T, Ogura K, Hiratsuka A., Biol Pharm Bull. 2011;34(3):371-8.

最近のトピックス

1.タバコ煙中に含まれる発がん性物質NNKが活性化された後、グルクロン酸抱合を受けて準安定状態となり、標的臓器に輸送された後再び活性体を放出する可能性を初めて明らかにした。

2. 和漢薬成分として使用される桂皮の抽出物に、肺がん細胞の抗がん剤抵抗性を低下させる働きがあることを初めて明らかにし、その機構はNrf2という遺伝子抑制によるものであることを報告した。

3.「ソリブジン薬害」の発生メカニズムの解明。抗帯状疱疹薬ソリブジンと5-フルオロウラシル(5-FU)系抗がん薬との併用による薬害の発生機構を、遺伝子工学的手法を用いて分子レベルで初めて明らかにした。